第51回日本SF大会 Varicon2012(ヴァリコン)

~第51回日本SF大会 Varicon2012~
       -The 51st Japan SF Convention-
開催日:2012年7月7日(土)~8日(日)
会 場:合宿の宿 ひまわり (北海道夕張市)
※本大会は「完全合宿制」です。


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 04 北海道SF論 第一回 久間十義『魔の国アンヌピウカ』および『オニビシ』(ともに新潮社)(前)


 UFOとユーカラ。一見、相容れないように見えるこの二つの要素が、久間
十義の『魔の国アンヌピウカ』(1996年)では、見事に「習合」させられて
いる。『魔の国アンヌピウカ』で言及されるアイヌの聖地アンヌピウカでは
「UFOフェスティバル」なる催しが企画され、ストーリーを牽引していく。
ただしその手法を、いわゆる「奇想」に依拠したものと早合点するのでは、
性急の誹りを免れないだろう。小説内に登場するアンヌピウカは、おそら
く、古来アイヌの聖地であったハヨピラ(現・ハヨピラ自然公園、北海道沙
流郡平取町内)をモデルにしているからだ。

 アイヌに文化を伝えたオキクルミというカムイ(神)がシンタと呼ばれる
飛行物体(船とも龍とも言われる)に乗って飛来したとの伝承が残るハヨピ
ラの地には、1960年代の終わり頃から、とあるUFO研究団体(「国際的規模
の科学的観測団体」)の施設が運営されていた(現在は解散)。

 アイヌ初の近代小説の書き手である鳩沢佐美夫は、アイヌ自身に対する内
部批判を含んでいたことでも注目を集めた「対談 アイヌ」(1970年)
(*1)内において、ハヨピラにおけるUFO研究団体の施設を問題視してい
る。「対談 アイヌ」では、「円盤の持つ科学性と民族神話の素朴な偶像性
が、時代をも隔ててだよ、どこから考えても結びつくはずがない」との疑念
を抱いた鳩沢が、実際に施設に乗り込んでみた結果が語られる。研究団体の
会員は鳩沢佐美夫に「円盤は信じる人には見えるが、信じない人には見えな
い」、「円盤は一種の発光物体的、超科学的、根拠を持つもの」などと繰り
返すのみ。加えてこのUFO研究団体は、金田一京助博士(*2)のユーカラに
も言及があると、シンタをUFO結びつけたPR文をパンフレットに記すのみな
らず、金田一京助の権威を利用して、盛んにアイヌとの関わりを強調してい
たのである。

 だが、鳩沢佐美夫が真に問題視したのは、おそらくUFO研究団体そのもの
ではない。行政や当のアイヌ自身が一種の観光産業従事者として、UFO研究
団体の怪しげな活動の片棒を担いだことが「告発」されているのである。
「対談 アイヌ」における中心となる批判の一つはこうした「観光アイヌ」
へ向けてのものであった。鳩沢佐美夫自身、母親がハヨピラの施設での祭り
に参加しようとしたことを必死で止めたと言われている(*3)。このような
ハヨピラの騒動は『魔の国アンヌピウカ』内に取り込まれ、物語の重要な基
盤となっている。だが、それに加え、バブル経済以降、北海道の各地で積極
的に行なわれたリゾート開発を盛り込むことで、再帰的に登場した「ハヨピ
ラ問題」はさらにスケールアップされて小説的考察の対象となるのだ。

 バブル期における第三セクター主導によるリゾート開発は、現在、北海道
が抱えている莫大な財政赤字の主要な原因の一つとなっている。象徴的なの
がテーマパークの建造ラッシュだ。バブル期に華々しく喧伝された『赤毛の
アン』の舞台プリンス・エドワード島を再現しようとした「カナディアンワ
ールド」(芦別市)の失敗は、芦別市の財政状況に多大な打撃を与え、1990
年代後半には、その悲惨な実態が繰り返し報道された。中国の清王朝を表現
した「天華園」(登別市)と、ドイツから城下町を移築した「グリュック王
国」(帯広市)は、閉園後に買い手がつかず、現在は放置され廃墟と化して
いる。『魔の国アンヌピウカ』の背景には、このような「観光バブル」の失
敗が色濃く根付いているのだ。

 『魔の国アンヌピウカ』の冒頭部では、廃線になった元JR富産別(トミサ
ンベツ)駅前のロータリー広場にて、「町の“過疎”そのものをPRするよう
に」とのシニカルな但し書きのもと、「ようこそトミサンベツへ! サラブ
レッドとユーカラの故郷(ふるさと)・富産別町」と書かれた「ペンキの剥
げた姿を初夏の日射しにさらした」広告塔の描写がなされている。この富産
別という町は、寛文九年(1696年)のアイヌ一斉蜂起で活躍した首長の名に
ちなんだ連作『オニビシ』(2000年)の主要な舞台であり、『聖ジェームス
病院』(2005年)のような社会派的「病院小説」のリアリズムを基調とした
作品においてさえも、言及される町である。ただ、実のところトミサンベツ
なる町は存在しない。作者が設定した架空の町だからだ。しかし、だからこ
そ、近代における「開発」の病理を集約させることができたのだろう。『オ
ニビシ』に収録された「心臓が二つある河」を見てみよう。

 権力に対する遠慮からか、曖昧な記述に終始しているため資料的には
全幅の信頼がおきがたいが、当時を回想した富産別町史には、「一九××年
のある日、この天皇の牧場の七万ヘクタールにわたる敷地に木柵をめぐらす
ため、トミサンベツ川流域に済むアイヌたちが、姉去コタンに集められた」
と書かれている。
 その数、およそ七十戸・五百人。彼らの労働で木柵ができあがったとき、
町史にいう「御料牧場経営の都合によって、全土人は知里別(しれりべつ)
町幌市内(ほろしない)に転住するのやむなきにいたった」という事態がも
ちあがる。勘ぐる必要など一つもない。これが意図的にアイヌ姉去に集めら
れ、そして強制移住させられたことの叙述であることは、誰が読んでもよく
わかるはずだ。
 そう、トミサンベツクル(トミサンベツ川の川沿いの住民)たちは天皇の
牧場を維持強化するために、箒で塵が集められ捨てられるごとくに、あえて
一ヶ所に集められ、まとめて強制移住させられたのだ。(『オニビシ』、58
頁)


 「心臓が二つある河」では、御料牧場(天皇専用の牧場)の建設のために
富産別のアイヌが、さながらネイティヴ・アメリカンの「涙の行進」を彷彿
させる強制移住を強いられたことが言及されている。この強制移住は、1916
年に北海道日高郡の新冠(にいかっぷ)町および静内町(現・新ひだか町)
にまたがって御料牧場が建設された際に行なわれた「アイヌの強制移住」と
いう歴史的現実に、ぴたりと附合するものだ。

 →続きは「中」(http://www.varicon2012.jp/taizen.php?no=05)へ。

【脚注】
(*1)『若きアイヌの魂 鳩沢佐美夫遺稿集』所収、新人物往来社、1972
年、24頁~31頁。
(*2)原文では三文字の伏字となっている。
(*3)須貝光夫『この魂をウタリに ―鳩沢佐美夫の世界―』、栄光出版
社、1976年、45頁。


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