第51回日本SF大会 Varicon2012(ヴァリコン)

~第51回日本SF大会 Varicon2012~
       -The 51st Japan SF Convention-
開催日:2012年7月7日(土)~8日(日)
会 場:合宿の宿 ひまわり (北海道夕張市)
※本大会は「完全合宿制」です。


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 06 北海道SF論 第一回 久間十義『魔の国アンヌピウカ』および『オニビシ』(ともに新潮社)(後)


※「中」(http://www.varicon2012.jp/taizen.php?no=05)より。

 北海道旧土人保護法(1899年)の施行以来、アイヌ民族は言葉を奪われ、
征服者たる日本人へ強制的に「同化」させられた。元来が狩猟民族であった
彼らは、「給与地」と名ざされた荒地を与えられ、強制的に農業に従事させ
られることとなったのである。

 現代アイヌ文学のパイオニアである知里幸恵は、『アイヌ神謡集』(1922
年)の序文で、「冬の陸には林野をおおう深雪を蹴って、天地を凍らす寒気
を物ともせず山又山をふみ越えて熊を狩り、夏の海には涼風泳ぐみどりの
波、白い鴎の歌を友に木の葉の様な小舟を浮べてひねもす魚を漁り、花咲く
春は軟らかな陽の光を浴びて、永久に囀ずる小鳥と共に歌い暮して蕗とり蓬
摘み、紅葉の秋は野分に穂揃うすすきをわけて、宵まで鮭とる篝も消え、谷
間に友呼ぶ鹿の音を外に,円かな月に夢を結ぶ。嗚呼なんという楽しい生活
でしょう」と書き付けている(*8)。ところが、向井豊昭の未発表の遺稿に
よれば、このような知里幸恵の感性は「アイヌ」ではなく「ヤマト」そのも
のだという。「アイヌ」には「ヤマト」のように花鳥風月を愛でる風習はそ
もそもなく、さらには「紅葉」をヤマトが為すようには認識しなかったと向
井豊昭は指摘している。つまり『アイヌ神謡集』を執筆した時点で、知里幸
恵は「アイヌ」独自の感性を「ヤマト」に見合うように上書きしてしまった
のである。

 また、アイヌの歌人である違星北斗、バチェラー八重子、森竹竹市、江口
カナメらは、「ヤマト」のものである五七五七七のリズムへ、自らの心情を
仮託して詠わざるをえなかったたため、近代日本における和歌の伝統からす
ると、あまりにもいびつな作品を残すこととなった。アイヌの詩人・批評家
である佐々木昌雄は、違星北斗、バチェラー八重子、森竹竹市の文業が「ア
イヌ」の文脈でのみ取り上げられ、その文芸性を無視されていると論じてい
る(*10)。彼らが文字通り血を吐いて残した作品であることを抜きにして
も、こうしたいびつさを、いわば「雑種」の肯定として、SFが本質的に内包
する物語批判の枠内で捉え直すことはできないものだろうか。

 しかしながら、近年のSFの中には往々にして、新自由主義的な状況を是認
し、性的・政治的・あるいは人種的な差別構造を無自覚に内包しているもの
が少なくない(*11)。例えば、村上春樹の『1Q84』(2009~2010年)はSF
としても高く評価されたが、作中でギリヤーク人について繰り返し言及され
るにもかかわらず、近代の北海道にはアイヌのほかにギリヤーク人も在住し
ているという視点が、綺麗さっぱり抜け落ちてしまっている。ところが、SF
の文脈からそのことを指摘した例は、いまだない。とりわけ近年のSFは、あ
まりにも脱政治的に読まれすぎてきたのではなかろうか。SFが時間潰しの読
書に留まる時代は、もはや終りを告げている。それゆえ、北海道における
「近代」の病理を赤裸々に暴きだした久間十義の作品をSFとの関わりで捉え
直すことは――鳩沢佐美夫が「対談 アイヌ」でアイヌ自身のあり方を問い
直したように――SFのあり方そのものを批判的に捉え直し、創造性へと転化
することに繋がりうるのではないか。

(岡和田晃)

【脚注】
(*8)平岡、前掲文。
(*9)『アイヌ神謡集』の引用は青空文庫によっている
(http://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/44909_29558.html)。
(*10)佐々木昌雄「鳩沢佐美夫の内景」(鳩沢佐美夫『コタンに死す 鳩
沢佐美夫作品集』所収)、新人物往来社、1973年、242頁。なお江口カナメ
についての言及がないのは、江口カナメが唯一の歌集『アウタリ』を出版し
たのが、1974年という時代性によるのではないかと思われる。
(*11)拙稿「ジュノ・ディアス来日記念イベント参加報告」
(http://speculativejapan.net/?p=211)、2011年も参照されたい。


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