第51回日本SF大会 Varicon2012(ヴァリコン)

~第51回日本SF大会 Varicon2012~
       -The 51st Japan SF Convention-
開催日:2012年7月7日(土)~8日(日)
会 場:合宿の宿 ひまわり (北海道夕張市)
※本大会は「完全合宿制」です。


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 14 北海道SF大全 第七回 池澤夏樹『静かな大地』(朝日新聞社)


     3月11日にあたって

 1年前のこの日に亡くなられた方々の御冥福を、心からお祈り申し上げま
す。
 人が文字を持つようになったのは、記憶を風化させたくなかったからでし
ょうか?
 そもそも、すべての言葉は鎮魂のために生じたのかもしれません。
 だから、言葉はいつも不在のものを追いかけます。
 この作品も、そのような言葉に満ちています。
 

  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

北海道SF大全 第七回 

   池澤夏樹『静かな大地』

 初出・朝日新聞(2001.6.12~2002.8.31)→単行本・朝日新聞社
(2003.9)→文庫本・朝日文庫 (2007.6)
 

  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 我々は北海道に対して「自然が豊か」というイメージを持っています。
 さて、では、その「自然」とは何なのでしょうか?
 この作品を「北海道SF」とするのは、北海道を通して、「我々にとって
自然とは何か?」という問題をつきつけてくるからです。それは、多分「
人類にとって農耕・牧畜とは何か」という問題とつながっています。

 『静かな大地』の主人公、宗形三郎は8歳の時に淡路から北海道の静内
(しずない=現在の新ひだか町・新冠町のあたり)に やってきます。そ
して、たまたま知り合った少年オシアンクルを通して、アイヌの言葉や 文
化を学び、彼らに親近感と敬意を抱きながら育ちます。
 長じた彼は牧場の経営を始めます。
 物語は彼の農場の繁栄と、彼の死による衰退を中心に語られます。
 語り手は彼の弟であったり、弟の妻であったり、オシアンクルであったり
します。誰もが、言葉をつくして「あの頃のこと、あの人のこと」を語ろう
とします。
 聴き手は彼の姪の由良です。
 あの人……宗形三郎が既にこの世にないことを、語り手たちは知っていま
す。
 そして、かつてあったものの多くが既にこの世にないことも、語り手たち
は知っています。

 「自然が豊かな北海道」という言葉で我々が思い浮かべるのは何でしょ
う?
 そのイメージの中心にあるのは、広々とした牧場の景色だったりはしない
でしょうか?
 しかし、牧場は、昔から北海道にあったわけではありません。
 牧場は、広大な森を切り 開いて更地にして、人間が作り出したもので
す。
 主人公の父も木を切ります。主人公もせっせと木を切り倒しては開墾に励
みます。
 こうして、それまでになかった広大な草原が、人の手によって出現しまし
た。
 そのため にバッタが大発生しました。明治13年のことです。

 空はきれいに晴れているのに、その空にまるで黒い網のような怪しい
ものが東の山の方から広がり、ざわざわとまるで松林を吹く強い風のような
音が天空から響きました。
 それはバッタの群れでした。数かぎりないバッタが飛んできて畑に襲いか
かったのです。
 ……中略……
 作物の一本ごとに数百匹のバッタが群れて、葉も実も茎も容赦なく食べま
す。
……中略……
 この年のバッタはまず十勝で大発生して、それが山を越えて西に飛び、日
高全域を荒らした後は更に西に飛んで胆振に入り、ついには虻田まで行った
ということです。
(文庫本 227ページ)


 かくて、その年の冬は、飢饉になってしまいます。
 主人公は、この時に貴重な食料をアイヌに分け与えます。
 そのことが、後に主人公を苦境に陥らせることになります。

 主人公がアイヌに食料を分け与えたのは、次のような事情からでした。

 この年の飢えはやはり辛いものでありました。和人はまだ外からの助
けもあり、金銭の蓄えもあってなんとか凌ぐことができましたが、アイヌは
ほんとうに困りました。昔ならばアイヌはどんな怠け者でも干し肉や干し魚
を用意して飢饉に備えておりました。しかし、明治の御代もこの頃になる
と、山にいっても鹿はおらず、川でいつまで待っても鮭は上ってこないので
す。
(文庫本229ページ)


 バッタの大発生も飢饉も、どちらも明治13年に実際に起きた出来事です。
 明治13年の頃には既に、「自然」は破壊されていたのです。
 その破壊の成果として牧場が成立し、アイヌの人々は生活の基盤を失って
いきました。
 
 我々の「自然が豊かな北海道」というイメージの中にある「自然」とは、
果たして何なのでしょうか?


 言葉はすべて、鎮魂のためにあるのではないかと思います。
 この作品は、そのような言葉に満ちています。
                        

                           (宮野由梨香)


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