第51回日本SF大会 Varicon2012(ヴァリコン)

~第51回日本SF大会 Varicon2012~
       -The 51st Japan SF Convention-
開催日:2012年7月7日(土)~8日(日)
会 場:合宿の宿 ひまわり (北海道夕張市)
※本大会は「完全合宿制」です。


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 17 北海道SF大全 第十回 北海道のアイコン、初音ミク  高槻 真樹


 今年二月七日、「さっぽろ雪まつり」の会場で初音ミクの雪像が倒壊し、
女性一人が負傷したというニュースは大きく報じられた。事情を知らない
人には「なぜそもそも北海道でミクなのか」と飲み込めなかったかもしれ
ない。実はミクを販売しているクリプトン・フューチャー・メディア株式
会社は札幌に本社を置き、ミクは北海道を代表する存在として期待を集め
つつある。昨年ACJAPANが放映した北海道キャンペーンCM(※1)で
は、化学者鈴木章など多くの有名人に混じってミクが紹介されているほど
なのだ。ミク雪像は今年ではや3年連続3回目。個人的にはむしろ、わず
か4日後に再制作が完成したことが大きな驚きだった。事故にもかかわら
ず、それほど愛されているのかと思ったものだ。

 いまや世界に羽ばたくバーチャルアイドルとなった初音ミク。二〇〇八
年に星雲賞を受賞しており、SFファンにとっても欠かせない存在となっ
た。「SFマガジン」の二〇一一年八月号では初音ミクが特集され、同誌
初の増刷を達成する空前の売れ行きに。野尻抱介五年ぶりの新刊「南極点
のピアピア動画」(ハヤカワ文庫)は文化としてのミク現象を検証し、S
F賛歌へと発展させた力作であった。

 SFの世界では何度もバーチャルアイドルを主人公にした作品が描かれ
ている。ウィリアム・ギブスンの「あいどる」(角川文庫)はもちろんの
こと、映像作品の「マックス・ヘッドルーム」「シモーヌ」も思い出され
る。だが八〇年代以降、実際に市場に投入されたバーチャルアイドルは多
くが忘れ去られており、フィクションが予想したような巨大資本による上
からの押し付けでは定着しないことがわかってきた。

 初音ミクの存在が興味深いのは、ほぼ草の根に近い形でネットから立ち
上がってきたことにあるだろう。製作元のクリプトン・フューチャー・メ
ディア株式会社は、ソフトウェアとしての「初音ミク」にほとんど設定を
付け加えなかった。ソフトのジャケットには確かにそれらしいアニメ絵が
描かれているが、ソフトを立ち上げてもキャラ画像はまったく登場しない。

 そもそもボーカル音源というソフトの基礎部分はYAMAHAが開発し
たものであり、クリプトンが付け加えたのは藤田咲という声優を使った
こととジャケットにアニメ風イラストを使ったことだけである(※2)。
だがそのことが多くのユーザーの想像力を刺激し、クリプトンの想像を
上回る形で次々とユニークな設定が付け加えられていった。ネギを振る
という個性的なモーションもユーザーの発案で、これに続く鏡音リン・
レンではロードローラー、巡音ルカでは「たこルカ」というさらに思い
がけない小道具が付け加えられていくこととなった。

 「道産子ミクさん」というのもそうした派生設定のひとつで、クリプ
トンが北海道に本社を持つことから連想して、北海道を称揚するキャン
ペーンガールとしてミクが使われた。ソーラン節を歌わせたり、なぜか
釧路湖陵高校の校歌を歌わせたり(※3)。常にその活用方法は予想の
斜め上である。

 なお、数は決して多くはないが、北海道をテーマにしたオリジナル曲
もいくつか投稿されている。せっかくの機会なのでここで紹介させてい
ただこう。

「北海道」
 そのものずばり、北海道の特産を歌いこんだもの。それにしてもなぜ
「四泊五日」と妙に具体的なんだろう(笑)


「バイクで北海道目指してみたPart.19」
 自作によるバイク旅の歌。北海道への旅に至るまでの長い道のりを描
いた映像エッセイだが、なんとこの時点ではバイク免許すらなく、この
回では先にテーマソングだけ自作してしまったらしい。妙に出来がよく
アクセス数も高い。


「桜ヶ丘三丁目」
 北海道の桜ヶ丘三丁目を歌ったものらしいのだが、北海道だけで中標
津、美唄、小清水など多数の「桜ヶ丘」が実在する。どこのことなのか
は不明。


「北海道の地名を並べただけの歌」
 北海道の地名の多くはアイヌ語から来ているとのことで、難読なもの
が多い。従ってそれを並べただけでなにやら荘厳なイメージが立ち現れ
るのが興味深い。


 それにしても、こうした流れを見ていると、メーカーがお膳立てをし
なかったことがいかに当たったかがよく分かる。バーチャルアイドルに
おいては、誰もが単なる受け手ではなく作り手の一端にタッチしたがっ
たということだ。そこにはいないからこそどこにでも遍在するバーチャ
ルアイドル。自分自身がミクの新曲を作ることもできるし、ダンスを振
付けることもできるし、プロモーション映像を作ることもできる。まる
でリナックスのようなオープンソースに限りなく近いアイドル。それが
初音ミクの人気の源泉なのだろう。

 オープンな場で皆がアイデアを出し合い、次第に集合知の結晶として
のアイドルが具体化していく姿はとても刺激的だ。皆のものであるが自
分だけのものとすることもできる。だからこそ皆に支えられ愛される。
 
 そんな集合知は時に思いがけない派生物も生み出す。それが、「ボー
カロイド亜種」という存在だ。秋田ネル、弱音ハクなどが有名だが、そ
れ以外に本日・四月一日にちなんで生まれたとても奇妙なキャラクター
がいる。彼女の名は「重音テト」という。やや「北海道」の文脈からは
外れるが、エイプリルフールにちなんで特別に紹介しておこう。

 彼女の別名は「嘘の歌姫」。まさしくその名の通りの歌がある。


 この長大な曲を聴けば、テトの不思議な来歴をすべて知ることができ
る。つまりもともとは「ミク・リン&レンに続く新作ボーカロイドキャ
ラクター」としてネットに流されたエイプリルフールのネタにすぎなか
った。だから当時作られた偽装サイトに書かれたプロフィールをよく読
むと年齢が31歳であったり、得意な事が「レンタルビデオの延長」で
あったりとかなり冗談のような内容である。当然エイプリルフール終了
とともに偽装サイトは撤収され速やかに忘れ去られる…はずだった。

 だがその存在を惜しむ人たちがいた。彼らは自らの持てる技量を結集
させ、虚構であったはずのボーカロイドをフリー配布のソフトウェア
「UTAU」の第一弾として実体化させてしまう。アマチュア声優の少
女が声を当て、ミクと同様に自由に操り歌わせることができるソフトが
なんと無料で配布されている。
http://kasaneteto.jp/index.html

 嘘が本当になってしまった一発逆転の信じられないような物語。それ
だけに熱心なファンが多く、ニコニコ動画における「重音テト」のタグ
件数は実に1万を超える。中でも衆目の一致する最高傑作として知られ
るのが「耳のあるロボットの歌」。

数学用語を駆使したとても難解な曲であり意味を取るのは非常に難しい
が、親しみやすいサウンドのため広く愛されている。SFファンにもと
ても興味深い作品といえよう。

 広がる表現は歌にとどまらない。重音テトの版権管理サークルツイン
ドリルの代表を務めるセリはテトを主人公にしたオリジナルコミックを
発表する同人作家としても活躍している。彼女は「耳のあるロボットの
歌」の歌詞から想像力を拡げ、UTAUたちの暮らす世界をゼロから構
築した壮大なSFコミックをコツコツと描き続けている。ボーカロイド
とは、UTAUとは何か、自分たちは何のために生まれ何をなすべきな
のか。テトは「耳のあるロボットの歌」の歌詞をたどり、世界に秘めら
れた謎を見出していく。機会があればぜひ手に取っていただきたい。
http://yosugaya.fem.jp/



 SFのサイドとしては現在進行形で成長し続けるバーチャルキャラク
ターとしてボカロ(およびUTAU)のことを気にしないわけにはいか
ないが、ユーザーサイドからもこうしてSFを強く意識した表現が現れ
始めたことは注目していい。たった一枚の少女のイラストから私たちは
なんと遠くまで来てしまったのだろう。そしてまだ、世界は拡がり続け
ている。いま、この瞬間も。

※ 1 http://www.ad-c.or.jp/campaign/self_area/01/index.html
※ 2 年齢・身長・体重といった最低限のデータだけは明記されていた。
※ 3 旭川東高校や釧路江南高校、帯広柏陽高校の校歌も。


Varicon2012実行委員会 事務局
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